オリーブの日があるってこと自体、ほとんどの人は知らないと思うけど、3月15日はオリーブの日。69年前の1950年の今日、昭和天皇が小豆島でお手撒きでオリーブの種を植えた日なのだ。その木は今でも小豆島のオリーブ公園で大切に育てられていて、立派な大木に育って優しい葉を茂らせている。5月にはたくさんの花を咲かせた後に実を結んで、秋にはたわわに実ったオリーブを収穫してオイルも搾っている。そのオイルは専用に特別に絞られて皇室に献上されているということらしいけど、真偽のほどは知らない。
太平洋戦争という日本の歴史上初めての他国への敗北を経験した激動の昭和の主人公、その昭和天皇がお手撒きになった大切なオリーブの木、それはもうどんなことがあっても守らないといけない。オリーブはもともと水の少ない地中海が原産の植物、だから水を求めて根を地中深く伸ばしていくんだけど、たくさんの雨が降るここ日本ではそんなことしなくても十分に水が得られるもんだから、しっかり根を張らずに育ってしまうのだ。だから台風なんかがやってきたらひとたまりもなくゴロリンと倒されてしまう。陛下のお手撒きのオリーブの木が倒れたなんてことになったら、小豆島町長は獄門磔もんである。而して毎年秋の台風シーズンになると、小豆島町の役場の人たちは、台風が来るたびに召集がかかって、決して陛下のオリーブの木が倒れることがないように、横殴りの冷たい雨が頬を叩くなか、夜通しオリーブを守り続けるのだ。毎年毎年、台風が来るたびに倒されては起こされてるウチのオリーブ達には本当に申し訳ない。
そんな昭和天皇が植えられたオリーブの品種はいったいなんて品種だったのか?お付きの人が訪ねた「このオリーブはなんていう品種なんですか」という問いに、オリーブ公園の職員ははたと困ってしまった。なぜって、オリーブの木はみんな挿し木で、種から育てることなんてしないから。オリーブの木は異種交配が基本、だから種を結ぶということは、品種の違う二つの性質が混血になるってことなんで、品種の特性を大事にするオリーブ生産者は全て挿し木、いわばクローンで株を増やしているだから、陛下のお手植えのオリーブがどんな品種になるかなんてのは、芽が出てこないことにはわからない。しどろもどろになって答えてしまったのが
「え、ええ~、エーと、エ、エ、エンペラー!」
おいおい。