オリーブオイルのデフェット②前回はオリーブオイルのデフェット(欠陥)はすべて生産者が手抜きをした「人災」だとお話しました。それが分かっているのに、なんでデフェットがなくならないんでしょうか?
世界最大のオリーブオイル生産国はイタリアとスペイン、その明るく大雑把な国民性であんまりこだわりがないから?ま、そんなことも少しはあるかもしれませんが、もっと本質的には違う理由です。それは
「オリーブオイルが果実を搾るオイルだから」
ん?なんかチコちゃんに叱られるみたい。
世の中の植物油のほとんどはその植物の果実ではなく種子を搾るんです。菜種、大豆、米、コーン・・・いわゆる核油と呼ばれます。オリーブオイルとアボカドオイルだけが、種でなく果実を搾って作られるオイルなんです。乾燥した種子は1か月でも半年でも品質が変わらずに保管することができます。それに対してオリーブの果実は収穫してすぐに劣化が始まります。大きな倉庫に保管して徐々に搾っていけばいい核油と違って、1年に1回秋に収穫されるその期間に集中して搾油してやる必要があるのがオリーブオイル。一般的には10月~12月くらいまでの2か月くらい、たった2か月の間にすべてのオイルを搾ってやらないといけないんです。ところが搾油機で一度に搾油できる量は限られています。すると何が起きるのか。当然搾りきれなかったオリーブの果実は倉庫に山積みになっていきます。日に日にその在庫は膨らみ、ついには発酵が始まって、前回お話したあの独特のにおい「avinado」という欠陥が出てきます。発酵というよりは腐敗と呼んだ方がしっくりきますよね。
腐った果実を搾るわけですから当然そのオイルも腐った臭いがします。オリーブオイルの品質を保つためにはどのようにして保管したらいいですか?なんて聞かれることがありますが、大概の場合、どんないい保管方法をしてもほとんど無駄、なぜなら最初から傷んだオイルだからです。
なんだか切ない話ですよね、一体、本当に欠陥のないオリーブオイルに出会うためにはどうしたらいいでしょうか?
一番の原因はオリーブオイルの価格が安すぎること。収穫したオリーブの果実が腐る前にどんどん搾るためには、大量の搾油機を置く必要があります。でも、1年に1回たったの2か月しか稼働しない搾油機を何台も買うのはたいへんな投資金額、当然そのコストが製品価格に乗ってきます。ただでさえほかの植物油に比べるとオリーブオイルは結構高価なオイルですが、さらにお値段が上がることになります。
そうなんです、本当においしいオリーブオイルというものは、他の植物油とは一線を画していて、高価であるべきなんです。
オリーブオイルに限った話ではないですが、消費者が値段の安さだけを追い求めることが、結果として自分たちの消費する食品の品質を大きく下げてしまっているのです。
太古の昔ローマ時代においては真のエクストラバージンオイルは王様だけが楽しめるとても高価なものだったんです。
香りづけや、匂い消し、味の骨格作りなど、多くは過熱媒体として使われる他の植物油にはできないオリーブオイルだけの特有の仕事があります。そんなオリーブオイルを一般の植物油との比較で価格を語ること自体に無理があるんです。
で、結局どうやったらデフェットのない本当においしいオリーブオイルを見分けることができるか?
まずは価格です、一本2,000円以下のオイルで良いオリーブオイルに出会うことはほぼ皆無と言っていいでしょう。でも厄介なのは、2,000円以上のオイルでもまだまだデフェットのないちゃんとしたオイルに当たる確率は50%以下でしかないこと。えー!そんな高いお金払ってまだデフェットに当たるんだったら、とても怖くて買えないよ。
残念ながらその通りなんです。唯一の方法は正しい知識を持ったオリーブオイル専門店から購入することだけです。それはどこかと聞かれたら誌面ではお答えしにくいので、個別にお問合せくださいませ。
私がオリーブオイルを生産している一つの理由は、正しいオリーブオイルを搾って、正しい知識を広めていきたいから。まずは基準となる物差しを知らないことには、いい悪いの判断はできませんよね。澳 OKI Oliveが目指すのは「オリーブオイルのお手本」を作ること。