意外と知らない方が多いのが、オリーブの収穫の時期。
品種によっても多少バラつきがありますが、秋がその収穫シーズンです。日本で言えばマンザニロのような早生の品種が9月下旬から始まり、わたしたちが育てているミッションは10月初旬以降が収穫時期となります。

オリーブ農家にとっては、収穫のタイミングが最も大事な見極め。実が青い未熟な段階ではオイルの含有率が低く、真っ黒に熟すと最もオイルがたくさん採れます。
では、真っ黒に熟したものを搾るのがいいのでしょうか?
以前にもお伝えしましたが、オリーブの品質と採油率はトレードオフの関係にあるんです。エクストラバージンオリーブオイルの特徴である、爽やかな青い香りや、強い抗酸化作用で健康効果の高いポリフェノール「オレウロペイン」を求めるには、できるだけ実が未熟の青い段階で搾油する必要があります。
現実には、世界中の多くの生産者が、完熟の実を使って搾っています。理由は簡単です、高いコストをかけて高品質なオイルを採油しても、それを価格転嫁することが難しいからです。

では、わたしたちの搾るオイルはどの段階で搾るのか?このグリーンの実だけで搾ります。出てくるオイルは目を見張るような鮮やかなグリーンで、爽やかな香りとピリリしたポリフェノールの辛みを持っています。
でも、こんな若い実から搾れるオイルはほんのちょっぴり。完熟した実なら10%~15%搾れるのに、このような青い実からはたったの3%~5%くらいしか搾れません。品質を最優先した結果がこの選択肢なんです。

エクストラバージンオリーブオイルは、オリーブの実を搾っただけの、100%天然オリーブジュースと表現されますが、搾油の現場を見ればそれを実感していただけます。搾油機のオイル口から出てくるオイルはまさに搾っただけのオリーブの液体。この段階ではまだ細かい搾りカスが残っているので、これをフィルターでろ過したら完成です。いっさいの化学処理も熱処理もしません。そのようにして搾ったオイルをバージンオイルと呼び、その中でも厳しい審査を通過した選りすぐりの品質のものだけがエクストラバージンオイルの称号を名乗れるのです。
その年の出来立ての新酒ワインはフランス語で「ヌーボー」と呼ばれますが、オリーブオイルではイタリア語で「ノヴェッロ」と呼ばれます。ノヴェッロという言葉自体は新物という意味ですが、一般的にノヴェッロといった場合、搾りたてのオイルをろ過をする前の段階のものをいいます。お酒で言えば搾る前の「濁り酒」の状態と言えます。
オリーブの果実がオイルにまだ残っているノヴェッロは、ろ過したものと比べるとより青くさわやかなオリーブらしい味で、素晴らしいものです。
でも、そんなノヴェッロの命はとても短く、一週間もするとそのカスが酸化し始めて、あっという間に品質が落ちていきます。イタリアのポリフェノールがたっぷり入った強い品種でも、せいぜい持って一か月です。

写真はイタリアのノヴェッロオリーブオイル。オリーブオイルの品質保持のためには、光を避ける着色瓶に入れるのが常識なのに、この瓶は無色透明。これは生産者の
「すぐに使い切ってくれよ」
という敢えてのメッセージなんです。農業の生産をしているとなんといっても収穫が一番の喜び。そんな体験をみなさんにして頂くことで、あらためて食べることへの感謝の気持ちを伝えることができたらうれしいですね。
例年オリーブの収穫が始まる10月には世界中から収穫のお手伝いをしてくれるオリーブサポーターが来てくれます。その時期は私たちのゲストハウスを合宿所として開放し、一緒にゴハンを食べながら収穫の喜びを分かち合います。まさに寝食を共にしての交流は何者にも代えがたい経験になります。ご興味のある方は是非来シーズンの収穫のお手伝いにお越しくださいませ。